アスベストに関する法令
(法律)
アスベストに関する法令・法律はとても複雑で、ほぼ毎年のように改正されています。どのような法律があるのか、何を対策すればよいのか、迷ってしまうことも珍しくないでしょう。ここでは、アスベストに関連した法律について、できるだけ分かりやすく解説しています。法律について知りたい方は参考にしてください(※2022年2月時点での情報を基にしています)。
アスベストの事前・分析調査に必要な要件を新設
まず押さえておきたいのは、アスベストの事前調査・分析調査の要件が新設されたことです。石綿障害予防規則第3条が改正され、2023年10月1日からは、アスベストの事前調査・分析調査について、厚生労働大臣が定めた者のみが実施できるように変更されました。そのため、所定の要件を満たす必要があります。
要件は事前調査と分析調査で異なるため、それぞれチェックしていきましょう。
事前調査の要件
アスベストの事前調査のうち、建築物に関する調査については、以下の要件を満たした者のみが調査を実施できます。
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- ⼀⼾建て等⽯綿含有建材調査者 ※⼀⼾建て住宅・共同住宅の住⼾の内部に限定
- 2023年9⽉までに⽇本アスベスト調査診断協会に登録された者
事前調査を実施するには、各石綿含有建材調査者講習を修了しているか、2023年9月までに⽇本アスベスト調査診断協会へ登録を済ませている必要があります。
なお、石綿含有建材調査者講習は日本環境衛生センターが実施しています。講習では関連する法令やアスベストのリスク、建材などに関することを学び、講習終了後に筆記試験が実施されます。筆記試験に合格すると、建築物石綿含有建材調査者の証明書を発行してもらえます。
一方の⽇本アスベスト調査診断協会への登録ですが、協会が定めた条件を満たし、講習で所定の成績をおさめることが必要です。
分析調査の要件
一方、アスベストの分析調査へ携わるには、次のいずれかの要件を満たしている必要があります。何種類かありますが、分析調査に携わる方は、2023年9月中には講習を受けることをおすすめします。
- 厚⽣労働⼤⾂が定める分析調査者講習を受講し、修了考査に合格した者
- 公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術の評価事業」により認定されるAランクまたはBランクの認定分析技術者
- ⼀般社団法⼈⽇本環境測定分析協会が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修(建材定性分析エキスパートコース)修了者」
- 一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている「建材中のアスベスト定性分析技能試験(技術者対象)合格者」
- 一般社団法人日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト分析法委員会認定JEMCAインストラクター」
厚生労働大臣が定めた講習、もしくは一部の公益・一般社団法人が実施する講習を修了している必要があります。
厚生労働大臣が定める調査者講習は、分析に関する関係法令や分析機器の取り扱い方法について学び、実技も実施されます。建築物石綿含有建材調査者講習については、以下、石綿総合情報ポータルサイトに記載されている登録機関で受講が可能です。お住まいの都道府県の機関を探し、講習を受講しておきましょう。
その他社団法人が実施する講習などは以下より実施日・内容をチェックできます。それぞれ講習費用や認定条件などが異なりますので受講前に比較しましょう。
事前調査の報告義務化にも注意
一定規模の建築物などの解体・改修工事を実施する場合、労働基準監督署へ事前調査の結果報告が義務化されました。施行日は2022年4月1日で、工事開始前に報告を済ませる必要があります。
事前調査の報告が必要になるのは、以下の条件に当てはまるケースです。
- 解体する部分の床面積が80平米以上の建築物
- 請負金額100万円以上の建築物の改修工事
- 請負金額100万円以上の工作物(ボイラーや焼却設備など)の解体・改修工事
新しい法律のインプットを忘れずに
アスベストに関する法律は頻繁に改正されていますが、常に新しい情報をインプットすることが求められます。複雑な改正も見られますが、しっかりと覚えておきましょう。
2022年2月時点では、以下のポイントを押さえておく必要があります。
- 2023年10月1日からは、事前調査・分析調査ともに要件を満たした者のみ実施できる
- 要件は事前調査と分析調査で異なる
- 特定の解体・改修工事をする際、労働基準監督署への事前調査の報告が義務化
特に事前・分析調査の要件が厳格化された点に注意しましょう。もし調査業務へ携わるのであれば、早めに講習を受け、要件を満たせるよう準備しておきましょう。